サムエル記第一・第二一章 逃亡するダビデ、ノブの祭司アヒメレクの所へ
ダビデは二度とサウルの前には出られません。見つかれば命を奪われることは必定です。本格的な逃避行が始まりました。ここから終章まで、サムエル記第一の三一章のうち、実に一〇章が逃亡物語で埋められているのです。これがダビデの生涯の事実とはいえ、神がダビデにこうした苦難を通らせ、また詳細に記載する意図はどこにあるのでしょうか。
理不尽なことが降りかかってきた時、立ち向かっていかないでひたすら逃げるのがよいと教えておられるのでしょうか。《三六計逃げるにしかず》を推奨しておられるのでしょうか 悪に勇敢に立ち向かって行くべきではないのでしょうか。負け犬のように逃げるだけでいいのでしょうか。ダビデは逃げ通しました。サウルに逆襲できるチャンスさえ、みすみす放棄するのです。机上で物語と追う者としては歯がゆくてなりません。
さて、ダビデはおそらくごく少人数で安全なところを祈りつつ探して進んで行ったと思われます。まず、エルサレムに近いノブの祭司アヒメレクのところに行きます。ダビデは逃亡しているとはいえかなり冷静です。祭司アヒメレクはあのダビデがなぜこんなところにと、不審を抱きつつも要求に応じて多少のパンと武器を差し出します。
と
ころがそこにサウルの配下のドエグが密かに成り行きを観察していたのです。のちにここから大惨事が起こってしまいます。ダビデはドエグを気にしつつも、なすすべがありません。