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みんなのブログポータル JUGEM

聖書の緑風

『人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つのことばによる』
神のことばである聖書に教えられたことや感じたことを綴っていきます。
聖書には緑陰を吹きぬける爽風のように、いのちと慰めと癒し、励ましと赦しと平安が満ち満ちているからです。
  • 2023.07.12 Wednesday -

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  • 2012.09.30 Sunday - 15:35

みことばのしずく ハガル・荒野のもう一つの民族の母 その4

 

前回までの要旨

アブラハムの子を宿したハガルはサラのいじめに耐えきれず、ついに逃亡。故郷エジプトへ通じるシュルの泉のほとりまでやってきます。孤独と恐怖のただ中で一つの声を聞きます。「サラの女奴隷ハガル。あなたはどこから来て、どこへ行くのか」それは神でした。

 

シュルへの泉のほとりで声をかけられたハガルは、夢中で、しかし即座に答えた。

「私の女主人サラのところから逃げているのです」この返答は確かに偽らざる現状を示している。しかし、質問の半分でしかない。「どこへいくのか」との問には答えていないのだ。ハガルは答えられないのだ。自分でもわかっていないのだから。

 

どこへ行くのか、ですか。どこへ、どこへ。ハガルは改めて自分に問うてみたと思う。ほんとうに、私はどこへ行くつもりなのだろう…。どこへ行ったらいいのだろう…。

今まで以上に、背中がぞくぞくするほどの孤独感と、立ちすくんでしまいたいような恐怖に襲われたことだろう。

 

そんなハガルを見透かすように再び声がした。

『あなたの女主人のもとに帰りなさい。そして、彼女のもとで、身を低くしなさい』

はっとしてハガルは辺りを見回した。この荒野に人がいるはずはない。

ハガルはとっさに理解したはずだ。それが神の声であることを。

 

あなたは神様ですね。アブラハムとサラの神様ですね。あなたは私とは無縁のお方だと思ってきました。エジプトの奴隷など相手になさらないと思っていました。とても悲しく思っていました。事実、あなたは一度も私には現れてはくださいませんでした。

 

でも、今、あなたはこんな死のような地で私に近づいてくださいました。あなたは私を見ておられたのですね。私のすべてを見ておられたのですね。私はひとりぼっちではないのですね。あなたは私の《エル・ロイ(ご覧になる神)》なのですね!

 

ハガルは夢から覚めたよう思いであったろう。

そうか、戻るのか。戻ればいいのだ。サラさまのもとに帰ればいいのだ。お詫びして置いていただくのだ。そしてこの子を産むのだ。育てていただくのだ。この子にとってはそれがいちばんの幸せに違いない。

 

なおも声が続いた。

「その子をイシマエルと名づけなさい。

主があなたの苦しみを聞き入れられたから。

その子は野生のろばのような人になり…」

 

ハガルは身を翻して振りかえった。今来た道がくっきりと映る。凍てついた心に温かさが戻ってきた。

 

こうしてハガルは再びサラのもとに帰り、無事に出産するのである。

ハガルは荒野で出会ったエル・ロイの神を我が神として、イシマエルを育てていったことだろう。

しかし、ハガルは再び苦難に追いやられることになる。(続きます)

 

  • 2012.09.29 Saturday - 12:06

みことばのしずく ハガル・荒野のもう一つの民族の母 その3

 

夫アブラハムから高慢なハガルの処分権を手に入れたサラは即刻決行した。

『サラが彼女をいじめたので…』と聖書は語る。いじめたとは…。具体的なことは記されていないが大いに見当はつく。身分の上下は明白である。もともと権力を持っているサラがさらに夫からのお墨付きを持っているのだからことはしやすい。隠れてする必要もない。陰湿ないじめではない。制裁に近いものだったに違いない。ハガルはいたたまれなかった。ついに『彼女はサラのもとから逃げ去った』のである。

 

それにしても、ハガルの胎内に宿る小さな命について、三人の親たちはどう考えていたのだろう。神様のご計画を実現するために信仰を持ってサラの申し出を受け入れたアブラハムは、正真正銘の父親ではないか。また、言い出しっぺの張本人サラは、一時の激情に駆られてハガル母子を追い出してどうするつもりなのか。そして、ハガルは身重の体を抱えてどこへ行こうというのか。

 

ハガルは荒野へ逃げていったのである。心の荒野を抱えて、はてしなく広がる荒野をさまよったのだ。ハガルの心中を行き来するものはなんであったか。あたりはまったくの荒野、身を寄せる一本の樹木すらない。出身地エジプトへ向かう隊商路シュルの道らしきものはあっても人影はない。色濃く覆うのは空恐ろしいほどの静寂のみ。

ハガルを荒野へ追いやったパニックはまだ続いていただろうか。多少は落ち着きが戻ってきただろうか。足は故郷に向かっていても、身重の女が一人でいけるわけがない。心はむしろ出てきたところへ向かったのではないか。

 

アブラハムもサラも私をこのままほって置くわけがない。じきに使いの者が迎えにくるにちがいないと、そんな期待を抱かなかったろうか。いや、だれに頼まれても帰らない。あんな辛い思いは二度としたくない。そうだ、このまま死んでもいい、この子といっしょに死んでもいい…。

 

だが、実際には死ねるものではない。それどころか行く手に広がる荒野を見ていると不安や恐怖すら感ずる。このまま夜になったらどうするのか…などと。

 

泉のほとりに来ていた。ふいに、何か気配がした。動くものを感じた。風ではなかった。ぬくもりがあった。声が聞こえた。

「サラの女奴隷ハガル。あなたはどこから来て、どこへ行くのか」神であった。

(続きます)

 

  • 2012.09.15 Saturday - 21:05

みことばのしずく ハガル・荒野のもう一つの民族の母 その2

 

敬慕する女主人サラから代理妊娠を依頼されたハガルは、どんな思いだったろう。いい話だと思ったか、とんでもないことだと思ったか、どちらであろう。どう思ったにしろハガルには逃れの道はなかったろう。主人の命に従うほかはないのだ。ちょうどそこにあった格好の道具のようにひっぱりだされたと言える。そこには人格の尊重は見られない。

 

いや、あったのだろうか。サラはハガルの意志を聞いただろうか。

引き受けてくれますか、いやならいいのですよ。あなたの意志次第です。決して強制ではありませんからねと、サラは優しく言っただろうか。例えそうであっても、ハガルは首を横には振れなかったであろう。

 

みごとに、まことにみごとに、ハガルは妊娠した。創世記16章である。ところが事態は思わぬ方向に向かっていく。聖書はこう記している。

『彼女は自分が身ごもったのを知って、自分の女主人を見下げるようになった』

これが大きな事件に発展していくのだ。妊娠したハガルは、なんと、大事な主人サラに対して高慢な態度をするようになったというのだ。しかしこれは当然と言えば当然かもしれないのだ。だがアブラハム夫婦には計算外だった。特にサラにはまったくの番外。自分の作ったシナリオのどこにも出てこないことだった。サラは憤然とした。黙ってはいなかった。押さえていたプライドや憤懣が火のように吹き出した。

『私に対するこの横柄さは、あなたのせいです』と夫に詰め寄ったのである。

 

ハガルはどうして急変したのだろう。サラからの申し出があったときは、そこまでのいきさつと今後のこともよく理解したはずだ。自分が産んだとしても決して自分の子ではない。乳を与え育児をしたとしても、母として、するのではない。それは仕事なのだ。

子どもはサラの子、アブラハムの息子、一族の大切な跡取りである。自分とは立場上親子の繋がりはない。子どもはご主人様なのだ。

 

本能として与えられている母性は日に日に目覚めていく。子への情愛が激しく高まっていく。この子はだれの子でもない、私の子。私は母なのだ。サラ様が母ですって。とんでもない。あの老女に子育てができるわけがない。私が育てるのだ。産んで育てるのだ。この子は私の子。だれにも渡さない。跡取りになるのは結構。父親はアブラハム様だもの。悪いけど、サラ様は無関係だわ。

 

エジプト人のハガルが胎内に息づく我が子を感じながらそう思ったかどうか、単純な想像に過ぎないが、ハガルはサラに対しては以前のようにはなれなかった。秘めても心の内は外に出るもの、匂うものである。サラは鋭く見て取り、嗅いでしまったのだ。

 

アブラハムは大いに当惑しただろう。火のように、はたまた鋼鉄のようになった二人の女性を扱うすべを知っているはずがない。アブラハムは逃げの一手でいく他はなかった。

『あなたの女奴隷はあなたの手の中にある。あなたの好きなようにしなさい』これは理にかなってはいるが、サラに対してもハガルに対しても無責任の何者でもない。

 

さあ、そこでサラは逆襲に出た。(続きます)

 

  • 2012.09.04 Tuesday - 20:33

みことばのしずく ハガル・もう一つの荒野民族の母 その1

モンゴル


ひとこと
8月下旬、モンゴルのウランバートルとその周辺に行ってきました。
この民族はもともと遊牧民族です。現在は都市化し定住する人々も多いですが、民族の血には古来からのものが流れているはずです。国土の風景も中東の荒野に似ているように思います。パレスチナを移動する聖書の族長たちを重ね合わせながら、旅をしてきました。


荒野の母ハガル 


創世記のアブラハム物語にはハガルという不幸な女性が登場する。教会の説教ではあまり真正面から取り上げられることはない。しかし、神様は彼女にも目をかけ祝福を与えられた。神様がアブラハムやサラを大いなる者とされたように、ハガルもまたもう一つの民族の母となった。現在のアラブ人の祖なのである。

 

ハガルは、正妻サラの提案によって、アブラハムの子を産むことになり、その過程で思っても見なかった苦しみに遭う、たいへん損な役回りをさせられた女性である。貧乏くじを引かされ、無理矢理に主役たちの人生に引きずり込まれた脇役である。

 

ハガルはサラの女奴隷で、エジプト人だった。サラだけに仕えていたサラお気に入りの下女だったのだろう。ちなみにサラは見る影もない老女と思いがちだが、そのころアブラハムは数百人の下僕と莫大な冨と家畜の群れをもつ族長、日本の徳川以前になぞらえると地方豪族の頭首であろうか、お殿様であり、しがたってサラは奥方様なのだ。

 

ハガルは16章に初めて名前が出てくるが、アブラハム一行は12章でエジプトに行っている。カナンの地に飢饉があったのでエジプトに避難したのである。ハガルはその時から何らかの理由でアブラハム一族に加わったと思える。サラは一時パロの宮殿にいたから、もしかしたらハガルはそこでサラに巡り会い、サラに仕えるようになったのではないか。もしエジプトの宮廷にいたとしたら、例え仕え女であっても、美人で利発な娘だったと思う。そしてハガルはサラを慕い、サラもハガルを可愛いく思い、二人はまるで母娘のようだったのではないか。

 

いまだに跡継ぎがいないことが、アブラハム夫婦の最大の悩みであるとは、家の者たち全員が周知していたにちがいない。口にこそ出さないけれど、奴隷の子にいたるまでひそかに先行きに不安と強い関心を抱いていたことだろう。主人夫婦の老いぶりを見れば、もしかしたら、使用人の中からでも跡継ぎに指名される者があるかもしれないと考えたかも知れない。サラのそば近くにいたハガルにはなおらさ、苦悩の程が我がことのように思えたにちがいない。そうこうしている間にも、歳月人を待たず、主人二人は老いていく。


神様は『あなた自身から生まれ出て来る者が、あなたの跡をつがなければならない』と言われる。親類縁者ではいけない、まして家にいる者は対象外である。苦渋の末サラに一つのアイデアが生まれた。――子を産めない私に代わって、ハガルがアブラハムの子を産めばいい。私はその子を自分の子として認め、育て、神様に跡継ぎにしていただこうーー


サラは心を決めるとすぐに夫アブラハムに提言した。ところで、サラの女心が心底承知したのだろうか。どうか想像する以外にないが、ここは深読みしないでハガルを追っていく。(続きます)

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