- 2023.07.12 Wednesday -
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聖書の緑風『人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つのことばによる』
神のことばである聖書に教えられたことや感じたことを綴っていきます。 聖書には緑陰を吹きぬける爽風のように、いのちと慰めと癒し、励ましと赦しと平安が満ち満ちているからです。
ちこくチルル その1ちこくチルル
天使のチルルはいそがしく羽をたたむと、天使会議の始まっている部屋へかけていきました。遊びすぎて時間をわすれたのではありませんよ。 遠い北国から帰ってきたばかりなのです。 そう、そう、どうしてチルルが天使会議にちこくしたか、そのわけをお話ししましょう。 いまでは『ちこくチルル』と呼ばれるようになってしまいました。 悲しくて何度泣いたかしれません。なんど涙をこぼしながらおつかいにでかけたかしれません。でも、チルルはこの仕事が大好きなのです。〈神さまのおつげ〉を聞いたとき、人々の顔がよろこびにあふれるからです。キラキラと輝き出すひとみを見るとき、チルルは最高にしあわせなのです。 天使会議
いつものあいさつをすると、 「ごくろうさま。つかれただろう」天使のリーダーであるガブリエルはそういうと、いつものようにやさしい笑顔でむかえてくれました。みんなも目を細くしてかるくうなずきました。いつだってみんな親切でした。チルルの苦労を知っているからです。 「おすわり、チルル。たった今、神さまから新しい命令がとどいた。いよいよ、今晩、出かけることになったよ」 「えっ、いよいよって、もしかして、それは…イエス様のことではありませんか」 「そうだ、イエス様が今夜、ベツレヘムの馬小屋でお生まれになるのだ」 「わーい、やったあー、とうとうきたのですね。いそがしくなるなあ。ほくは、だれのところに知らせにいったらいいのですか。早く命令をください」 チルルは胸がドキドキしてきました。
「いま、みんなと相談していたんだが…」 ガブリエルは言いにくそうです。 「きみは、るすばんをしてもらいたい…」 「ど、どうして!」 チルルは立ち上がってさけびました。 「これは今までのうちでいちばん大切なしごとだ。サタンがどんなじゃまをするかもしれない。できるだけ早く知らせなければいけないのだ」 「わかっていますとも」 「まず、全員で、ベツレヘムの郊外で野宿している羊飼いのところに行く。彼らは、救いぬしが来られるのを、ながいあいだ待ちこがれていた。そしていっしょにイエス様にお会いすることになっている」
「そのあとで、神さまの『信仰者めいぼ』を見て、世界中に出かけていく。チルル、そのときにはきみにもおねがいする。二、三時間のしんぼうだから、待っていてくれないか」 「ああ、ぼくはこの日をどんなにたのしみに待っていたことでしょう。お、おねがいです、連れていってください」
「かわいそうだよ」 「連れていこうよ」 「できることなら、僕のせなかに乗せてあげたい」 「ぼ、ぼくもそのことを考えていたんだ」 みんな、口々に言いました。 「みんな、忘れてはいけない。天使にはそれぞれ役目がきまっている。戦う天使はミカエルの群れ、神殿を守るのはケルビムの群れ、わたしたちガブリエルの群れは〈神さまのおつげ〉をとどけることだ。せなかに何かを乗せてはいけない。このやくそくを破ったら、すぐに羽がおれて、天から追い出されるのだ」 「ああ、ごめんなさい。ぼく、いのちがけで飛びます。みなさんにごめいわくはおかけしません。だから、だから連れていってください」 みんなしーんとしてしまいました。
「きみの気持はよくわかった。よし、連れていこう。チルル、しっかりついてくるんだぞ」 とうとうガブリエルが言ってくれました。(つづく)
Category : 創作童話
マロンとフロンの水くみ その2*水をくみに
「父さんがいれば、してくれるのにねー」 フロンは心細いのです。 「しかたないよ。へブロンのお役所に登録に行ってるんだから」 マロンが言い聞かせるようにいいました。 「家畜小屋の人たちは遠くから来たみたいだね」 「たしか、ナザレからだってばあちゃんが言った」 井戸に近づくと、水をくむ音がします。人がいるようです。夜に人がいることはほとんどありませんから、二人はすこし明るい気持ちになりました。 「どうしたんだい、マロンにフロン。こんな夜に」 パン屋のおじさんでした。二人の家では毎日おじさんのお店にやぎの乳を届けます。おいしいパンを作るのに使うのです。 「あのね、おじさん。母さんがお水がたくさんほしいんだって」 フロンが話し出しました。つづいてマロンがわけを話しました。 「ふーん。ナザレから登録に来た人に赤ちゃんが生まれるのか。ベツレヘムまでは遠かったろうね」 「ローマの皇帝も面倒な命令を出したものさ。とっても迷惑だよ。でも背くことはできない。わしらの国はローマの属州なんだから」 二人にはおじさんの言うことがよくわかりませんでした。 「よーし。おじさんが水をくんであげよう。旅の空で生まれる赤ちゃんのためにね」 水が勢いよくかめに入っていきます。じきにいっぱいになりました。 「おじさん、ありがとう」 「ありがとうございます」 「元気な赤ちゃんだといいね。気をつけてお帰り」 暗い道に荷車の音が響きます。でこぼこにくると、ときどき水が飛び散ります。マロンが車を引いて、フロンがかめを押さえています。 「赤ちゃん、生まれたかな」 「いそがなくちゃ」 下り坂にきたときでした。 「あっ!」 マロンの声がして荷車が傾きました。
バシャンー かめが横になって、水はすっかりこぼれてしまいました。フロンはびしょぬれです。 「たいへんだー」 「空っぽだよ」 二人はわっと泣き出してしまいました。 「帰りたいよー」 フロンの声が震えています。 「帰れないよ。お水がなくちゃ、赤ちゃんが困る。母さんも、ばあちゃんも、旅の人たちもー」 ほんとうはマロンだって帰りたいのです。 「どうしよう」 「どうしよう」
「はやく、はやく。もうすぐ生まれるよ」 「ばあちゃん…」 「お水が…お水が…」 マロンもフロンも涙声です。 「どうれ、お水をみせてごらん」 そのとき、空から光の束がふってきて、かめの中まで差し込みました。三人の顔もくっきり見えました。 「まあ、こんなにいっぱい。二人とも、よくやったね!」 「えっ?」 「あっ! お水だよ」 「これだけあればじゅうぶんだよ。さあ、いそいで」 マロンもフロンも不思議でたまりません。二人はそっと肩を寄せあいました。
「二人とも、聞いたかい。赤ちゃんが生まれた!」 ちょうど家のま上に、大きな大きな星がかがやいています。 「フロン、明日も水くみにこようね」 「うん。赤ちゃんのためにそうしよう。こんどはきっと成功するね」 二人はぎゅっと力をこめて手を握りあいました。(おわり) 注・創作ですので、必ずしも史実どおりではありません。
Category : 創作童話
マロンとフロンの水くみ その1 「二人とも、いそいで起きてきて」 母さんはあわてているようです。いつもよりずっと早口で、大きな声です。 「なんだろう?」 「どうしたんだろう?」 二人はふたごの兄弟です。飛び起きて顔を見合わせると、母さんのそばへ駆けていきました。 「お水がたくさんほしいの。井戸へ行ってちょうだい」 マロンとフロンはまた顔を見合わせました。こんな夜に、水をくみに行きなさいなんて、今日の母さんはとっても変です。 「お水?」 「たくさんいるの?」 裏口からばあちゃんが入ってきて、心配そうに言いました。 「わたしがいっしょに行こうかのう」 「いいえ、赤ちゃんが生まれるお手伝いをしてください」 母さんはきっぱり言いました。 マロンとフロンは目を丸くしました。 「赤ちゃんが生まれるって?」 「どこで?」 「家畜小屋に休んでおられる旅の人だよ」 ばあちゃんが教えてくれました。 「夕方、泊めてくださいって来た人たちのこと?」 「やさしそうなおじさんときれいなおばさんだったね」 母さんは顔を近づけると二人の目をのぞき込んで言いました。 「赤ちゃんが生まれるとすぐにお湯に入れてあげるのよ。たっぷりのお湯にね。だからお水がほしいの」 「小屋の入り口に荷車を出しておくよ。大きなかめでも運べるから」 ばあちゃんが出ていくと、母さんも台所へいそぎました。 マロンとフロンすこし心配になりました。水くみのお手伝いならしたことはあるけれど、二人だけでは一度もありません。 「がんばろう」 マロンがいつもより太い声で言いました。 「うん。二人だから、きっとできるよね」 フロンは細い声でした。 つづく
Category : 創作童話
母さんの机 その2その次の日も、母さんは戻りませんでした。 三日たってもリーラは母さんに会えませんでした。父さんが洞穴の近くに食べ物を置きに行きました。母さんとララちゃんのお母さんの分です。 「ララちゃんよくなってるかな。母さんはどうしてるかしら。おばさんも」 リーラは気持ちが落ち着きません。心配でいっぱいになるとまた母さんの机に行きました。 「母さんはここでいつもお祈りしていた……」 リーラも手を組んでお祈りをしました。すると母さんのにおいがしてきました。母さんのそばにいる気がしました。 七日目に、父さんがおしえてくれました。 「遠くに母さんが出てきて、声が聞こえてきた。ララちゃんはがんばっているって」 「わーい、ララちゃんきっと直るね。母さんがついてるもん」 リーラは飛び跳ねながら机に駆けより、なで回すと、母さんと手をつないでいるみたいでした。 でも、十日たっても母さんは帰りませんでした。 次の日、空の雲が切れて、朝から日が輝きだしました。とうとう雨期がおわったのです。 シモンおじさんと、ララちゃんを抱いたおばさんがやってきました。 「ララちゃん、なおったんだね。なおったんだね!」 リーラはララちゃんのほっぺをつついてみました。 「母さんは、どこ?」 おじさんとおばさんの目から涙があふれ出ました。 「母さんはね、いそいで……神様のみもとに行ってしまったわ……」 家中の者たちがわっと泣きだしました。 「ゆうべも、母さんは夜通しララをだっこしていました。明け方になって、熱が下がった、もう大丈夫よって私にララを渡したの。ほんとうにララの息がらくになって目が開いたのです。ほっとして、休みました。でも、母さんは朝になっても起きませんでした…目を閉じたままでした」 「母さんはララにいのちをくれた。ララの代わりに死んだのだ」 おじさんが喉からしぼり出すような声で言いました。 「わーっ」 リーラは家がさけるよう声で叫ぶと父さんにしがみつきました。父さんはリーラをしっかり抱き上げました。リーラの泣き声は野原に山に空に響きました。だれもとめようとはしませんでした。それからも、母さんの机の上に伏しては泣き続けました。 よい天気が続いて、お魚がたくさん捕れ、子羊が生まれ、麦が実ったころ、リーラは机から離れました。もう母さんの声もしないし、姿もみえなし、においもしてきません。最後に見たのはララちゃんを抱いて笑っている母さんでした。 「わたし、これからはララちゃんのお姉ちゃんになってあげる」 リーラはみんなにきっぱり言うと、シモンおじさんの家へ走って行きました。(おわり)
Category : 創作童話
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