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みんなのブログポータル JUGEM

聖書の緑風

『人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つのことばによる』
神のことばである聖書に教えられたことや感じたことを綴っていきます。
聖書には緑陰を吹きぬける爽風のように、いのちと慰めと癒し、励ましと赦しと平安が満ち満ちているからです。
  • 2017.04.18 Tuesday - 21:38

利根川の風 その15 日本の女医第一号 荻野吟子の生涯 おわりに

15回にわたって連載しましたが今回で終わりです。

長らくのご愛読ありがとうざいました。

出典は、拙著「利根川の風」からの全文です。

なお、取材地の写真がありますので、次回に掲載します。

 

 ■おわりに

利根川の風の中で・生誕地に立って

 

 この書を閉じるにあたって、生誕の地を訪問した。最後に、生誕の地訪問を記すのは順当ではないが、そもそも、終焉の地に立ったことから吟子を追かける旅が始まったのだ。終わりからの始まりであったわけである。

 

 だれのことであれ、どこでこの世に第一声を上げ、どこで最後の息をしたかは興味深いものがある。その間にその人の人生模様がある。誕生と死が同じ場所の人は今では少ないかもしれない。異国の地で客死した人もいるであろう。吟子がその信仰に生きたイエス・キリストは、ユダヤのベツレヘムの家畜小屋で旅の途中に生まれ、エルサレムの丘で十字架にかかって亡くなった。

 

 吟子は利根川の風に包まれるようにして産声を上げた。そして、隅田川の水を流す横十間川の源森橋のたもと近くで息を引き取った。そのとき吟子の耳には利根川の水音が聞こえ、一陣の川風が頬をかすめたかも知れない。六二歳とは、今では若すぎる死である。あと二十年生きていてほしかったと思う。吟子より一八歳年上の矢島楫子は九二歳、羽仁もと子も八四歳まで生きた。

 

 俵瀬は交通網の発達した今でも行きにくい僻地である。

 八月の末、暑さの和らいだ日に、熊谷市の荻野吟子生誕の地顕彰碑と記念館を目指した。高崎線普通電車で上野から一時間余りである。その後はバスに乗る。これも一時間を要した。バスは果てしなく広がる田園の中を走る。青空の下に畑や田んぼが整然とフラットな大地を埋めつくしている。点在する家々はまるで住宅展示場からそのまま運んできたモデルハウスのようだ。人々の暮らしの豊かさを物語っているように感じた。バス停の終点で下車。帰りの時刻を睨みながらまずは生誕の地へ。ちなみに降りたのは私一人であった。記念館見学者も終始一人であった。

 

 見上げるような顕彰碑に惹かれた。幅2メートル、縦3メートルほどの大きな石で、読むにもカメラに収めるのも難しかったが、碑の後部に、吟子女史の愛唱聖句『人 其の友の為には 己の命を捨つる 之より大いなる愛はなし』(ヨハネ15章13節)がしっかり刻まれているのがこの上なくうれしかった。この碑は北海道の瀬棚に同じく顕彰の碑が建てられたのに触発されて一年後に設置されたと、これもたった一人の記念館のボランティアの老男性が語ってくれた。

 

 この地を訪ねた大きな目的は利根川を見ること、利根川の風に吹かれることであったから、碑の裏手に見つけた階段を上がって土手に上った。広い河川敷のはるか向こうに利根川は静かに流れていた。吟子の産声を聞いたであろう利根川、失意の吟子が実家へ戻る心のうめきを聞いたであろう利根川だと思うと、胸が張り裂けそうだった。

ちょうど快晴に近い空の下を微風が吹いていた。心地よい風であった。しかし、離縁覚悟で家出してきた吟子には剣の刃先のように痛かったに違いない。

 

 今、私を急き立てるのは北海道の利別川の風と吟子が十年以上暮らした瀬棚の空である。

 吟子をその地へ導かれた神が、鷲の翼に乗せて連れて行ってくれる日を待望している。

 

                                   おわり

▼参考資料

『続すみだ ゆかりの人々』墨田区教育委員会社会教育課 

『荻野吟子 実録 日本の女医第一号』 奈良原春作 国書刊行会  

『花埋み』 渡辺淳一 新潮文庫

『人物近代女性史 明治女性の知的情熱』瀬戸内晴美編 講談社文庫 

『明治の女性たち』 島本久恵 みすず書房

『黙移』相馬黒光 日本図書センター

『とくと我を見たまえ 若松賤子の生涯』山口玲子 新潮社

『人物近代女性史 自立した女性の栄光』瀬戸内晴美編 講談社文庫

『ふぉん・しいふぉるとの娘』吉村昭 新潮文庫

『我弱ければ―矢嶋梶子伝―』三浦綾子 小学館

『時代を駆け抜けた三人のなでしこたち』DVD いのちのことば社

その他パンフレット等

 

 

▼訪問地

吟子終焉の地 墨田区向島   

吟子の写真を見に国立国会図書館 

吟子の墓地 豊島区雑司が谷霊園  

本郷教会 吟子受洗の教会 文京区真砂坂上 

荻野医院開業の地 千代田区三組坂下    

明治女学校跡 千代田区六番街   

吟子生誕の地 熊谷市妻沼町俵瀬  

吟子夫妻渡道の地 北海道久遠郡せたな町

 

 

 

Category : 利根川の風

  • 2017.06.16 Friday -

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